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今年10月のボリショイの死亡事故、「出演者の過失」との結論

今年10月9日にモスクワのボリショイ劇場で出演者がセットの下敷きになるという死亡事故が起こり(写真の左から3番目の人物)、即刻公演が中止になりました。で調査委員会が出した事故原因は、

「アルコール中毒」

責任は本人にある、と結論づけたそうです。

https://operaplus.cz/vysetrovaci-komise-oznacila-herce-za-vinika-smrtelne-nehody/

死亡した歌手の母親が雇った弁護士によれば、誰も本人のアルコール中毒の兆候(協調性やバランスに明らかな乱れが生じる)に気が付かず、本人はずっと劇場の中にいたため、どこでアルコールを摂取したのかもわからない。さらに、委員会はどうも内部の人間が任命されるようになっていて、委員会そのものに問題がある(自浄作用がない)、とのこと。また母親はこの調査中に電話で見知らぬ人物から息子の死について原因を探さないよう脅しを受けた。

母親はこの結論にショックを受けている。弁護士は提訴する考えを示している。また劇場は葬儀費用を全額負担するとしていたが、棺桶代と墓地までの車代しか支払われていなかったことも明らかになり、弁護士の主張によってはじめて残りの費用が支払われた。劇場の経営陣は、歌手やオーケストラに箝口令を敷いており、何かを話すことは即時解雇を意味するのだということです。

ボリショイでは今回の事故を受けて組合が安全面について再考を要求しているが、いまのところ再考されることはなく、危険な重いセットはそのまま使われている。例えば「(リムスキ=コルサコフの)《サルタン皇帝》のセットが倒れたら舞台は墓場になる」という指摘があるとのこと。

ボリショイの2019年がプリミエっぽい《サルタン皇帝》のダイジェスト動画は以下。

サーカスっぽい演出も取り入れられていて「華やかやわー」と思いますけれど、たしかにものすごく重そうな壁的なものもある。スペクタクルと危険は隣り合わせということか。しかしなるべく危険を避ける、リスクは低くする、というのもプロフェッショナルには求められるものでもありましょう。