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合唱は安全か?アメリカの感染症専門家の意見

いろいろと異なる意見が飛び交うこのご時世ですが、安心して合唱を楽しむまでにはまだまだ時間がかかりそうだ、という話です。

今月5日にアメリカの合唱指導団体などが集まってオンラインディスカッションが開かれたそうです。全米歌唱指導者協会(NATS)、アメリカ合唱監督協会(ACDA)、舞台芸術医学協会(PAMA)ほかが参加し、専門家としてサウスカロライナ大学耳鼻咽喉科医学部長ルシンダ・ハルステッド博士、メリーランド大学の感染症(バイオエアロゾル)専門家ドナルド・ミルトン博士らが参加。

アメリカ各地の合唱関係者に大きなショックを与えたという専門家の見解は以下の通り:

there is no safe way for singers to rehearse together until there is a COVID-19 vaccine and a 95% effective treatment in place, in her estimates at least 18-24 months away.

「ワクチン、および95%効果のある治療法が開発されるまで、合唱のリハーサルを安全に実施する方法はない。そしてそれは最低でも18-24ヶ月先になる。」

またワクチンが出来た後でも、合唱を再開するにあたっては、誰かが感染するリスクを覚悟し対策をしっかり立ててやらなければならない、と。人間はこれまで結核やポリオなどの感染リスクとともに生きてきた。だからコロナもそうなるだろう、ってことのようです。厳しい意見だ。

ただし「ウイルスの拡散とエアロゾル化に関連し《歌手に特化した》研究は残念ながらほとんど行われていないが、一定のことは推測できる」と言う言い方を専門家はしているので、これが絶対に正しい最終結論だとは断言は出来ません。そもそもアメリカと日本とでは状況は違うし死者の数も全く違うので、そういったことは念頭においておく必要はありますが、そうは言っても、日本の合唱は安全だと断言することも出来ない。

なおこの情報のソースはこのブログ(ソーシャルディスタンスを守って客席を作ったらスカスカになる、という記事を書いた人です)、それから全米歌唱指導者協会サイトのこのページ

●このディスカッションで挙げられた問題点は3つ。

1) 間隔を開けることでは解決できない。
エアロゾル化したウイルスを拡散させる原因は《適切な換気の欠如》だが、部屋の空気を1時間に何度も替えたり、紫外線を当てたりしても、ウイルスは完全には除去できない可能性がある。「極めて小さな、ミクロンレベルのわずかなウイルスで感染する可能性もあり、ウイルスは16フィート(注:約4.9m)移動することすらある

よってコンサートホールのステージ上で物理的な距離を置くことは不可能。「大きな合唱団のためにはスタジアム級の広さが必要」。

2) マスクは安全ではない
N95であればある程度の安全性は得られるかもしれないが「呼吸しづらい」、「暑い」、「酸素濃度低下」、「CO2の増加で頭痛が引き起こされる」、「喘息のような重大な健康上の問題を抱えている人を傷つける可能性がある」といった問題がある。

また、インフルエンザ患者を対象にした調査では「マスクをしたまま30分間、咳をせずに座り『アルファベットを3回言う』などほんの少ししゃべるだけで、インフルエンザウイルスがマスクを通過し排出された」という研究結果があるそうです。(マスクに関する議論はいろいろありますけれど、マスクをすれば絶対大丈夫というわけではないやろ、とは皆さん思っておられるのではないですか)

3) 現在のPCR検査は3~5%の偽陰性がある
妊娠検査薬のようにすぐ結果が出るような検査の開発が急がれているが、現段階のものはPCR検査よりさらに感度が低く、実用レベルにはほど遠い。そして、無症状で感染を広めているケースもあるので要注意だ。

ワクチンの開発には18-24ヶ月、そして95%の高い効果がある薬物治療の開発には6-12ヶ月かかるだろう。その両方が世間に広まるまでは「マスク、手袋、ソーシャルディスタンス」。

なお、合唱の再開にあたっては、予防策を講じること。自宅でのPCR検査+会場に入る前にも検査(体温チェック、パルスオキシメーターによる血液中の酸素飽和度のチェックを義務付けるなど)。

●先日、ドイツの流体力学の専門家が「合唱は安全」と言ったという話を当ブログでもご紹介いたしました。これに関して、元記事に設けられていたコメント欄で「こういう話があるみたいだけど」と書いた人がいます。それに対してもコメントがついておりまして、

Sadly this study has been debunked and does not even come close to supporting its conclusion. I wish it did, but this is a hypothesis generating study at best. Generally speaking it has been thoroughly disproven by over a century of infectious disease research. Two physicists in a fog chamber only shows us how far the initial plume flies. It says nothing about small particles traveling after that in real world conditions, and we have oodles of research showing what does happen including a powerful MMWR from the CDC today regarding the infamous rehearsal in WA.

悲しいことにこの研究はまったくの間違いです。これが本当だったら、と私も願ったのですが、どんなに贔屓目に見ても仮説生成型(注:やってみようや、なんかわかるかも知らんで的な)研究でしかありえませんし、既に感染症研究によって徹底的に否定されている内容です。この残念な物理学者は、最初の噴霧がどれだけ飛ぶか(注:調査結果では最大50cm)ということにしか着目しておらず、小さな粒が現実世界ではどういう動きをするのか、という点に全く理解がありません。そのあとに何が起こっていのるかということについては大量の研究結果があります。ワシントンの合唱団のリハーサルで何が起こったかに関してCDCの感染症情報にも記述があるとおりです。

https://www.middleclassartist.com/post/nats-panel-of-experts-lays-out-sobering-future-for-singers-no-vaccine-no-safe-public-singing

皆が安心して合唱を再開できる日が早く来ることを祈ります。

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まとめてあります】合唱とコロナに関する当ブログの記事一覧は以下ページにまとめてありますので併せてお読みください↓

https://mcsya.org/list-corona-and-choir/