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今秋開催のヨーゼフ・ヨアヒム国際コンクール(ハノーファー)出場者36名が決定

ブラームスのベスト・フレンド、大ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムさん(1831-1907)を記念して1991年から行われているヨーゼフ・ヨアヒム国際コンクール(ドイツ、ハノーファー)の出場者が決定したというニュース。コンクールも徐々に帰ってきていて、明るい兆しがみえてくるようだ。今年9月26日にスタートし、ファイナルは10月10日です。

ここから出場者全員の名前とお写真を見て下さい。
https://www.jjv-hannover.de/en/participants

個人的にはエンリケ・ロドリゲスくん(19歳、カナダ)の個性的な写真にぐっと惹かれました。激烈に場違いな感じがしてすごくいいのでぜひみなさんも上URLに行ってチェックしてみてほしい。

いやーしかしこのコンクール、1991年創設ってまだまだ歴史が浅いなとかついつい思ってしまいますが冷静に考えますともう30年も経っているわけだ。時間が経つのは早い。早すぎて追いつけない。時間さん、ちょっとまって!

このコンクールの過去の有名な入賞者にはネマニャ・ラドゥロヴィッチ、セルゲイ・ドガージンなんかがいます。日本人ですと三浦文彰が2009年に優勝していますし、南紫音や辻彩奈といった人たちも入賞しております。あと、ここは優勝賞金がえらい高い、というイメージでしたが、いまや3万ユーロ(399万円ぐらい)というのは、いやもちろん高いんですけれど“爆発的に高い”というほどでもなくなってきた。

創設者はクシシュトフ・ヴェグジンというポーランド出身のおっちゃんで(ヴァイオリニストで教育者です)、たいへん感じの良い方。って今改めて公式サイトをみるとコンクールのディレクターを退いてますやんか(名誉会長として名前は残している)。ほらね。時間が経つのは早いものだ。

代わりに芸術監督になったのはアンティエ・ヴァイトハースとオリヴァー・ヴィレの二人。えっ、なに?ヴァイトハース、知らないの?(自分が知っているときだけ自信満々なんやめろ)。名前がかっこよくていいですよね。私はこの人のことを男性だとしばらく勝手に思ってたんですよね。女性だと知ったときの衝撃よ・・・・。およそ10年ぐらい前の甘酸っぱい思い出です。なおヴァイトハースはこのコンクールの第1回目の優勝者でもあります。

もうひとりの監督オリヴァー・ヴィレはクス弦楽四重奏団のメンバーであり、ハノーファー音楽大学の教授です。私はクス弦楽四重奏団と一緒に日本ツアーに出かけたことがあるよ。ヴィレ氏が監督になったからかどうなのか、セミファイナルでは弦楽四重奏曲のファーストヴァイオリンパートを演奏するという課題も(恐らく今回から)入っていて、これはなかなかない新しい試みだ。あと同じくセミファイナルでヴァイオリン協奏曲の弾き振り、およびバルトーク《ディヴェルティメント》の第1楽章をリーダーとして牽引する、という課題もある。むちゃくちゃ攻めてるなこれ。

課題曲はこちら:
https://www.jjv-hannover.de/en/competition/repertory

これはつまり、ヴァイオリンのソリストとしての資質のみならず、室内楽奏者としての能力やオーケストラをまとめ上げる能力(コンサートマスター、指揮者としての資質)も求められるということになり、ものごっつやばいでこれ。こんなんこれまでなかったんじゃないですか(あったらすいません)。いわばパリ・ダカールラリーよりも厳しく、ル・マン24時間耐久よりも遥かに厳しいと言えよう。

「因数分解やサインコサインタンジェントなんて習ったって意味があるのか、大人になってから使う人なんかいない。教える必要があるのか」と最近語った政治家がおられるようですが、ソリストを目指す人たちが弦楽四重奏曲を弾く意味があるのか、オーケストラ統率能力を求める必要があるのかと問われたら、堂々と「ある」とお答えください。あるんだよ多分(めっちゃふわっとしててごめん)。

最後に雑学コーナー(ってかこのブログ自体がそもそも雑学みたいなもんですけど):クス=Kussってドイツ語で「キス」っていう意味なんですよ。しかももっと驚くことに、これがファーストヴァイオリンの方の名字なんですよ。日本語ですと「接吻」という名字といった感じかなと。日本語にも不思議な(興味深い)名字はたくさんありますけれど、名字由来netで検索した感じでは接吻という名字は今のところないようです。