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濱田滋郎『南の音詩人たち アルベニス、セヴラック、モンポウの音楽』

いつも面白い本を出してくださっているアルテスパブリッシングに感謝。また必読の書が出ました。『南の音詩人たち アルベニス、セヴラック、モンポウの音楽』。昨年3月にお亡くなりになった濱田滋郎さんの、おそらく最後の新刊。私はどちらかと言えばどぎつい言葉を探したり使ったりする側の人間なんですけど、まったくそうではない濱田滋郎さんはあこがれの存在です。

無性にその音楽が聴きたくなる、不思議なテンションで、淡々と流れているようで心に長くとどまる文章。こんな文章を書ける方はほかにおられますまい。私が濱田滋郎さんの文章を目にしたのは高校生のときだったと思うんですよね。桐朋でもスペイン音楽史の授業、とりましたよ。お話もまた淡々とされていてね、講義を聴いていますと心地よく、眠たく・・・すやすや・・・・(いやはやそのα波力の強さよ)。

時折コンサートホールなどでお見かけし、その後姿を眺めさせていただいていました。最後にお見かけしたのは、スペインからソプラノ歌手のマリア・バーヨを招聘した時。いつもの柔和な笑顔をお浮かべでした。

個人的に知遇を得ることはかないませんでしたが、ちょっと距離を置きながら文章を楽しませていただく、そういう存在でした。お亡くなりになったと聞いた時はいろいろな思いが去来いたしました。20年くらい前からずっとお年をお取りにならない、全くお変わりにならないように感じていましたが、やはり人間であることが証明されてしまった。

↑追悼という言葉とともに出版されたこの本はタイトルの通り3人の作曲家を採りあげていて、なかなかこの3人に関する文章を目にすることもありませんし、こうやしてスペイン音楽に広い知識をお持ちの濱田滋郎さんの文章で集中的に読めるのは楽しい(セブラックはフランス人ですけどスペイン国境近くの出身です)。モンポウとも直接お会いになって話をされたあたりとか、まさに手に汗を握る!!・・・というのとは違いますが、読んでいて静かに興奮する。

そしてやはりというか、いつものとおりというか、読んでいると音楽が聴きたくなるから不思議ですよね。ついうっかりQRコードを読み込んで聴いてしまった。セヴラックはその昔、ビリー・エイディのCDを買って知ったんですけど、独特の雰囲気がたまらないっすよね。今もセヴラックを聴きながら草むしりをした後の土曜日の朝を迎えています。不思議だくしゃみが止まらない(花粉症の名残)。

さあみんなもセヴラックを、モンポウを、アルベニスを毎日ガンガン聴こうぜ!!おっと、ガンガンだなんて、濱田滋郎さんの本にふさわしい言葉ではありませんね、やりなおし。

こうしてスペインの佳人たちによる名曲の数々を日がなゆったりと聴くのも趣き深いことであろう。