日本の場合はホールに調律師がいるということはありませんがヨーロッパではそのホールの楽器を任される調律師がいるそうです。ベルリン・フィルハーモニーでその責任を負っているトーマス・ヒュプシュThomas Hübschという人がいるそうでその人のインタビューがBachtrackに載っていて面白かったのでちょっとご紹介。
https://bachtrack.com/feature-piano-tuners-keyboard-month-berlin-philharmonie-february-2020
この人が調律師になったきっかけは、ブレンデルが調律師との難しい関係について語っているなにかの記事を読んだことだったそうです。それから40年後の今、ブレンデルとは良い友人となったのだそうです。
そしてこれが面白いしどの楽器のことを指すのか大変興味深いのですが、「あなたのお好きなピアノは」という質問に対して、浜松にあるベーゼンドルファー、と答えているところです。いわく「このピアノで演奏するとまるでホイップクリームの風呂に浸かっているような気持ちになる」。・・・・なかなか特殊な表現ですが、面白いですね。
かつて浜松市には日本ベーゼンドルファーがありましたがそこにあった楽器のことを指しているのでしょうか。あるいはアクトシティ浜松の楽器?それとも個人所有の?高名な調律師がこうして浜松と答えていることに私の好奇心がうごめいたのであります。何かご存知の方がおられたらじゃんじゃん教えて下さい。
そしてそれとは別に最後に書いてある逸話ってのもなかなかですな。
American pianist Shura Cherkassky was always difficult with piano benches. I’ve had a colleague in Steinway who was tuning for Shura’s recital. He called and asked me to bring all available piano benches to the Chamber Music Hall. So I took around 15 benches to the hall. When I got there, the stage was already full of chairs. He found one suitable and played on that one. After the recital they asked him how everything was, and he replied: “the piano bench was excellent, but the piano was terrible…”
https://bachtrack.com/feature-piano-tuners-keyboard-month-berlin-philharmonie-february-2020
「シューラ・チェルカスキーはピアノの椅子へのこだわりで有名だった。ある時、彼のために調律をしていたスタインウェイの調律師がわたしを呼んで、ピアノの椅子をありったけ持ってきてくれないかと頼んできた。15種類ほど用意しただろうか、結果そのうちの一つを彼は選んだ。終演後、なにか問題はなかったでしょうかという問いに対してチェルカスキーが答えてこういった。
『ピアノの椅子は素晴らしかったがピアノが最悪だったね』」
ま、こういう大爆笑、ではなくても思わずニヤッとわらっちゃう小話っていうのは世の中に満ちておりますな。それではみなさま、一週間お疲れさまでした。よい週末をお過ごし下さい。グーテライゼ。ちがった、ボンウィークエンド。