もう今年は海外からの招聘企画は実現しないのではないか。そういう諦めの声も聞こえてくるようになってきました。「夏には国境開くんじゃないか」「秋口には、、、」「10月には、、、」などと言われていたのが徐々に徐々に伸びて行き、年内いっぱいは難しいのではないか、と口にする人たちも出ています。
年内が無理だったら来年の冬の間も厳しいのでは、と思ってしまうのは、冬になると患者の数も増えそうな嫌な予感がしているから。インフルエンザだって冬に流行るんだから、コロナも冬にまた流行るのでは、と、根拠があるわけではないですが漠然と考えてしまいます。
さて、業界関係者の多くの人がいま、大変気にかけているツアーがあります。そう、ウィーン・フィルです。ウィーン・フィルの来日が今年11月に予定されています。11月5日がツアー初日ですから、来日まであと1月半ほど。この来日予定は、業界内でホットな話題になっていて、いろいろな噂があちこちを駆け巡っています。日本だけでなく、ヨーロッパでも話題になっています。「ウィーン・フィルは、来日するのか」「ウィーン・フィルが来日したら、その後の大型招聘企画も実現の可能性が高まる」。
関係者の期待と不安が入り混じり、ジリジリとその動向を気にしているのです。主催者はじめ、各地の現場の皆様の関係者の大変なご苦労、ご心労が透けて見えるようです。皆様、本当にお疲れ様です!!
ウィーン・フィルの公式サイトの中にある「ツアー」のページにはしっかりと日本ツアーが掲載されています。というかアジアツアーが掲載されている。アジアツアーの前後のツアーはキャンセルになっているが、アジアツアーにキャンセルの文字はありません。
中国→台湾→韓国→日本
試しに中国、台湾、韓国のツアー会場のウェブサイトを見てみましたが、カレンダー等に掲載がなく、公演があるかどうかわからない。既に一部は中止を決断しているかもしれないし、コロナの影響でギリギリまで公演を掲載していないという可能性もあります(唯一、公演が現状ネットで公開されているのを確認できたのはソウルの世宗文化会館。ほかのホールにも掲載がありますでしょうか。その場合ご教示ください。私の検索不十分です)。この世界的状況のなか、公演中止を決断した主催者がいても全くおかしくはありません。
日本も、今は国境が開いていませんから、このままだと来日はできません。でもいろいろ噂が飛び交っているのは、ウィーン・フィルだし、という妙な期待感のようなものがあるからでしょうか。もしかしてウィーン・フィルなら・・・来日できちゃう・・・?
これは私がこの業界にどっぷりと浸かりすぎ、感覚が麻痺してしまっているからかもしれません。ワンおばちゃんも当初は「out of question」と一蹴していましたが、ヨーロッパの関係者たちと電話しているうち「never say never」(世の中に絶対はない)などと言われ、果たしてどうなるだろう、というのが今の気持ちだそうです。我々二人揃って感覚麻痺であります。
もしウィーン・フィルが来日できるとすれば、いくつかのシナリオが考えられます。
(1)ウィーン・フィルのみに国境を開く
(2)ウィーン・フィルを先頭に国境を開く
(3)ウィーン・フィルよりも前に国境を開く
(1)ウィーン・フィルのみに国境を開く
「クラシック音楽だけに開くのはおかしい」「なんで俺らのビジネスは認められなくてウィーン・フィルだけ認められるの?」「ウィーン・フィルだってビジネスで来るんやぞ」・・・・かえってクラシック音楽というものに対する風当たりが強くなる危険性もはらむのではと思われるこのシナリオにいまいち説得力はありません。
諸外国からも声が挙がるのは必至。「なぜオーストリアの特定団体だけが優遇されるの、俺たちも入れてケロ」。そう、ツアーをしたくてうずうずしているオーケストラや団体は世界中に多数ある。仕事がないと飯の食い上げ。ツアーなしでは死活問題という団体も少なくないでしょう。各国の団体がケロちゃんと化してわれもわれもと続々手を上げる様子が目に浮かびます。なので、
(2)ウィーン・フィルを先頭に国境を開く
来日が可能となる場合、これが3つのパターンのなかでもっとも現実的な気がします。世界最高クラスのオーケストラの来日が、日本の国際ビジネス交流復活の狼煙を上げる!ババーン!!(1)と同じく、他の業種から「なんで?」と言われる可能性はありますが、でもまあ国境が開くならそれはそれでよし、としていただける可能性は低くない。
ただ、ガバっと世界中に対して国境フルオープンしちゃうって言うようなノーガード戦法は取れないでしょう。それやると「うおっ!」って世界中から大注目を浴びるのは必至ですが、どちらかというと野次馬的な「おーやっとるやっとる、どうなるか見ものやな」っていう感覚になっちゃいますよね多分。
(3)ウィーン・フィルよりも前に国境を開く
いわゆる打ち上げ花火的な効果はありませんが、国境が閉じたままで苦しんでいる様々な企業にとって(2)よりさらにありがたい話でしょう。
国境を開けるということにはそこそこ大きめのハードルがあって、それは敢えて書くまでもありませんが「国境が開くことに対する心理的不安」です。「海外から人が来るのは怖い」。根拠があるのか、ただの風邪なのに!という意見もありますが、安心感ってのもまたわりと無視できない要素です。不安が燃えさかる可能性があり、国境が開くことで感染が爆発する可能性も排除できない・・・。国境を開ける、特にヨーロッパ、というのはそれなりのステップのように思われるので、開けるにあたっては高度な判断が求められることは間違いありません。現実的に、開いたとしても一気にガバっと開く可能性は高くなく、蛇口は絞った感じで徐々に開けて行くのではないかと思われます。
つまり(4)やっぱ無理やった・・・。の可能性も残念ながらあるわけです。
ただ、いつまでも閉じこもっているわけにはいかないのは紛れもない事実。そしてもはやGo Toはじめ世の中の動き、経済は活発化している、とも言える・・・・。
(1)から(4)までどのような結果となるにせよ、我々はその結果を淡々と受け入れ、引き続き生き残りをかけていきます。