写真は全然関係ありません。広島で乗ったキティちゃん新幹線です。いろいろキティでした。
仕事がら、舞台袖で極度に緊張する人も見てきました。全然緊張しない人もみてきました。
緊張する人というのは、口数が少なくなり、落ち着きなくウロウロと歩き回ったりする人。ため息がやたらと出る人。またあるいは楽屋に閉じこもったまま静かに耐え、呼びに行くと弾丸のように舞台に出ていく人もいました。
この弾丸タイプというのは例えば、近私が出会った中ではホアキン・アチューカロというピアニストがそうでした。スペインの大ピアニストです。御年86歳。楽屋から舞台袖に呼びにいくときとは基本的に言って舞台の照明を変える直前なのですが、この人の場合、照明を落としてから呼びに行くべきなのです。
舞台袖にアチューカロさんをお呼びして照明を変えようとしましたところが、早くしてくれもう待てないから、と苛立たれまして、なるほどと、勉強になりました。しかもそんな時に限って遅れてきたお客様がドアから入ってこられまして、座るまでお待ち下さい、、、、いやもう待てない!と押し問答のようになりまして、ああ申し訳のないことだったと、あとから反省したのでした。
かとおもえば全く緊張しない風の人もいて、人によって全然タイプが違うから面白い。いや、面白いなんて言葉で表現してはいけないのでしょうけれども。
アンドレイ・ググニンは緊張するのか
アンドレイ・ググニンはどうだったでしょうか。本人と会話をした限りでは、あがり症というわけではなく、少なくともひどく緊張するタイプではなさそうでした。
なぜそう思ったかというと、一番には公演の直前までリラックスしている風に見えたこと、そして演奏と全く関係ない話をずっとしていたこと、などが私がそう思った理由です(中には緊張に耐えるため機関銃のように話す人もいますが)。そうですよね。大きなコンクールを勝ち抜いてきた人ですから、演奏への重圧、とりわけ一発勝負とどう向き合って対処するかという能力は長けているでしょう。
いやーゲルギエフとの共演は本当に緊張した、ショスタコーヴィチの1番の協奏曲だったんだけど、例によってゲルギエフがリハーサルに遅れに遅れて・・・結局まったくリハーサルがなくて・・・ぶっつけ本番で、しかも自分はゲルギエフとの共演は初めてだったし・・・・もうものすごいストレスで、どうなることかとひやひやしたんだけれど、ゲルギエフはさすがにものすごい指揮者だよ、完璧にぴたっと音楽が合った。はんぱないと思った。と、広島でのコンサートの開始3分前に延々そういう話をしていたわけです。
前半が終わって休憩のときも、あっ、一次予選の長さ50分までって決まっているのに53分かかったな(前半に一次予選の曲をまとめて弾いたんです)、どうしよう。ま、なんとかなるか、そもそもワルトシュタインの後に一回袖に帰ってきたからそれで1分長くなってるから52分だ、とか言っていました。鷹揚な感じ、好き。コンクールではちょっとずつ早く弾きゃいいんだよね。ですって。ちなみに第二次予選の持ち時間は60分。これは越えませんでした。57分ぐらいでした。
「50分越えたらどうなるの?失格になったりして?」と冗談っぽく聞いてみたら「わからないなー、失格ってことはないだろうけれど、減点とかされんのかな、わからん。チリンチリンと鈴を鳴らされたりしてね、わははは。でも、コンクールにもよるけれど、曲の間にお客さんの拍手が入ることがあるからね、それによっても長くなっちゃう事もあるし、そのへんはあいまいなんじゃない?」
そういう適当な感じが、ロシア的で嫌いじゃないなー。
というわけで改めまして頑張れググニン、えいえいおおおおお!