緊急事態宣言が決定し、大変残念なことにコンサートの中止が次々と発表になっています。中止の判断をせざるを得ないコンサート主催団体のご関係者はさぞ無念だろうと思います。自分たちが悪いのではない、ウィルスが悪いのだ・・・とはいえ、とやり場のない感情がドロドロと溢れ出すでしょう。政府に怒りの矛先が向いたとしても無理のないことと思います。
ところで、海外から外国人が来日して(あるいは邦人が帰国して)14日待機をしている最中にコンサートが緊急事態宣言によって中止になった場合、出演者の出演料はどうなるのか。あるいは旅費宿泊費はどうなるのでしょうか。
ケースバイケースである、とまず述べておきますが、一番多いのは「旅費宿泊費は出演者に支払われる。出演料は支払われない」、だと思います。
コンサートがなくなると日本にいる理由もなくなるので、予定を変更して早々に離日することもあると思いますが、旅程変更に伴い発生する費用も含め、アーティストには旅費交通費のみが支払われるケースがもっとも多いのではないか。ただし主催者が金銭的にめっちゃきつい場合「ごめんなさい」とアーティストに旅費交通費の一部負担を土下座してお願いするようなケースもないとは言い切れない(ついでに書いておくと余裕綽々なのにきついフリをする邪悪な人たちも現れるかもしれない)。
コンサートを中止すると主催者には大きな損失が発生します。それが興行というものだ、というご意見はあるでしょうし実際そうなのでしょうけれど、主催者としてはできるだけ損失を少なく抑えたいし、コンサートのために何時間も準備をした、あるいはリハーサルをしたということであっても、コンサートが開催されていない以上、出演料を支払う理由は、ない。全額または一部を支払う主催者もあるかもしれませんが、それは主に「アーティスト救済」といった意味合いで出されるのであって、そもそも主催団体の資金にかなりの余裕がなければ出来ません。現実には中止時に「大丈夫っす、出演料、払いますよ!」と言える主催者は極めて稀れでしょう。
つまりこのコロナ渦が続く限り、来日/帰国してコンサートに出演するというのはアーティスト側にも一定のリスクを伴うわけです。であれば今後「日本からのオファーは断る」という判断をするアーティストが出てもおかしくありません。というかむしろすでにそうなっているケースもあるでしょう。いや、日本に限らず、世界的レベルで同じことが起こっているはずです。
「14日待機があるから他の仕事を断って早く日本に来たのに、日本での収入もゼロ、断った仕事で得られたはずの収入もゼロ」これは悲惨以外の何物でもない。まあ来日するため断った方の仕事が予定通り実施される保証もないので、一種「賭け」なわけですが。
あるいは今後「中止になってもお金は払ってほしい」と訴える、あるいは契約書にそういう条項を盛り込んでほしいという要求がアーティストや所属事務所から出る可能性もある。多くの団体はそこで「そういうことを言うなら残念だけどじゃあ別の方に頼むことにします」と返答せざるを得ないわけです。リスクはできるだけ低く抑えたいですから。誰もハッピーにならない。
それにしても、現実として突然の公演中止を強いられ、かつ政府からはまったくその補償が出ない(なぜなら要請ベースだから)、と言うことが今後も繰り返される場合、ますます日本のコンサート主催団体の存在は危うくなります。そしてその可能性は、残念ながら低いとは言えないのではないか。