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【ベンジャミン・フリスのベートーヴェンへの道のり】迷路その1:メンデルスゾーン横丁の巻1

ベンジャミン・フリスと日本で音楽愛好家に言うと、殆ど「ああ、知ってますよ。メンデルスゾーンとフィールドの専門家でしょ。CD聴きましたよ」と言う答えが返ってくる。実はとんでもない、誤解であるらしい。 「いやーコンクール、例え1位になっても、それはその時だけのこと。その後そう劇的に人生は変わらない。なんだか皆んな本当にコンクール優勝したら、全てがバラ色の人生みたいに思ってる人が今でもいるんだよね。 そんな時になんちゃらコンクール1位でした、なんて経歴に書いて歩くってなんだか寂しいというか悲しくなるよね。そんなこと言わなきゃいけないのか。ただただ僕の演奏を聞いて欲しい。それだけなんだけど、そういう時に録音の話が来たんだよね。それでやることになった。別に自分の方からやりたいと言ったわけじゃなかったんだ。ところが不思議なことが起きてしまう。 メンデルスゾーン僕全曲だと思って引き受けたんだ。当然、無言歌をやると思っていた。というか、無言歌やるから引き受けたつもりだったんだ。そしたら「ああそれはね、というかちゃんと別の方に頼んでありますから」「ハッ!それはどういう事でか??」「あまりにもご負担が多いと思って、他の方に予めめ頼んでおきました」「そんな!無言歌があると思って、愉しみに…..」「何をおっしゃる、無言歌の事何か考えないで、他の曲にちゃんと集中してください。素晴らしい曲だらけじゃないですが…….大変ですよ…..甘く見ないで、さあ頑張って」後で聞いたら、無言歌を弾くという人が先に選ばれていて、レコード会社がメンデルスゾーン全曲を出したいと思っていたところ、だったそうだ。フリスがいいじゃないと言うことになったらしい。係の人が連絡するときに、「メンデルスゾーン全曲を出すことにしました。よろしくお願いします」と言ったので鵜呑みにしてしまった。まさに「そんなー!!!」と落ち込んでしまったらしい。 これは、コンクールの後、そう間もない頃の話だった。 コンクール後の一番最初の録音はベートーヴェンのディアベリ変奏曲。それからしばらく経ってこの話が来たらしい。最初「ベートーヴェンじゃなくてメンデルスゾーンか。でも無言歌があるから、嬉しい…….考えてみれば、僕の人生まっすぐな道だったけれど、幅の太いまっすぐな大きな道、横にくねくねぐねぐね回っていたりジグザグに進んだり、まっすぐだけど、遠回りして直線てやつだ」 フリスはいう「僕の夢なんだよねー。無言歌を全曲弾く。 不思議なんだよ。”あなたのメンデルスゾーンの録音拝聴しています。無言歌ほんとに素晴らしい“…..。僕一曲も録音していないんだ。無言歌」「そういう時はどういう風にするの。なんていうの?」「無言歌って素晴らしいですよね」やっぱり紳士の国イギリスから来たジェントルマンなんだはとワンおばちゃんは思った。 絶対いつかはやりましょうね……