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今何故、バッハの無伴奏(チェロ)か?

MCSはピアノがメインになっている団体の様に見えてしまいます。確かに、設立会長はヴィクトル・メルジャーノフ。そしてセクエラ・コスタですが、昨年亡くなった大ヴァイオリニスト、リアナ・イッサカーゼも名誉会長を長い間務めていました。

以前からバッハの無伴奏には、平和のメッセージがまるでヨーロッパの石畳の様にきっちり敷き詰められている様に神への祈りの様な強い力を感じていました。 戦後80年の今年、どうしてもチェロのバッハの無伴奏で本年のコンサートを始めたかったのです。

カンタ氏はスロバキア出身。ソビエト時代の1986年のチャイコフスキーコンクールに当時のチェコスロヴァキアを代表して参加していた。 彼の音楽には「平和」の重みを身に染みて知っているのだろうなと言う何かを求めてきた人の心の旅路の様なものを感じたのである。何時終わるかもわからない旅、今度は何処に導かれていくのか。

星も月も見えない夜もあれば満面に輝く夜空もあるけれど、陽は必ず上り、終わらない戦いはない。 「平和」と言う言葉を安っぽく使わないで欲しいと言うお声をここのところよく頂く。お教え頂きたい。それでは私たちは何を出来るのか?成すべきなのか? 演奏家が演奏し 主催者が企画制作し、又作曲家が創作する。これらは何の為なのか?聴いてくれる人々の為。その人達が少しでも心豊かになり、安らぎを得ることができる為。一番身近な小さな「平和」の源を作る為だと私は考えたい。

多くの東独市民がハンガリーからスロバキアの首都ブラティスラーヴァを通って大量に西側に出国し、ベルリンの壁がある日突然壊れ、パスポートがチェコスロヴァキアからスロバキアとなり、日本で長く活動して来たカンタ氏の「道」。カンタ氏と一緒に一息して穏やかな気持ちを分かち合う空間。彼の奏でるバッハの無伴奏が我々の心を“いっとき”だけでも満たしてくれればと言う思いで本年最初のコンサートとします。 平和をテーマに、アレクセイ・リュビモフ、アーシュラ・オッペンズと80代の大御所に混じって、今やリュビモフの教えの中で最も活躍しているオルガ・パシチェンコ、昨年のエリザベート王妃国際優勝のドミトロ・ウドヴィチェンコとシリーズは進んで行きます。如何か「時」が平和に導いてくれますよう心より願っています。 1年の始まりに、ご一緒に静寂のひと時を共有できればと思います。

今回からウィグモアホールのコーヒー、モーニングやアフタヌーンのコンサートを真似てみました。 現在、Artistとリハーサルを子供たちのために解放すると言うことを交渉しておりますので、短いベビーカーコンサートを限定10組位なために考慮中です。追ってご連絡いたします。