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ワンおばちゃんのミッドナイト・コール

MR 山根も書いている通り、欧米においては多数の大手音楽事務所が人員削減を実行せざるを得ない現状となっているようだ。

ワンおばちゃんが一昨晩、懇意にしているあるロンドンの大手音楽事務所のマネージャーに電話したところ「今朝Intermusicaがcut the job by half!!」といきなり挨拶もなしに絶叫された。「CAMI(コロンビア・アーティスツ)の事もあるのだから別に驚くと言うほどでもないでしょう」と言うと、「驚くとかそんなもんじゃない。地震があり、津波の第一波が来て呆然としているところへ第二波がたたみ掛けて来る。もしかして次から次へとこの波が来るのでは無いか?と考える間にまた次の波が遠くからやってくるのが見えるのだ。体が硬直してどうにもしようがない。」「小学生のとき学校の教科書で読んだ地震や津波の僅かな知識が頭の中をぐるぐる巡っているうちああ、もう波がもうそこまで、、、という感じだ。」

なるほど。

「現状でjob cut は何件ぐらい?」と問えば「大手で人員削減してない会社が一軒でもあるんだったら教えてほしい。この波は米国から東に向かって吹いて来ている。すでに英国、そしてヨーロッパ。時間をかけてアジアに。時間差で襲って来る波だ。東に向かうにつれ波の高さが徐々に低くなる事を願う」と言う。

マネージャー氏の話では「オーストラリア(豪州)から聞こえてきた話によると、彼らはこの状況ではまずなんといってもオーケストラをkeep afloatさせるために(とはいえ、ただもたせると言うのではなく『何とか最後の息の根を止めない』と言う意味で)、まず海外からのアーティスト招聘を止めよう、自国の若手アーティストにチャンスを与えようと言っている」。

そうか、若手支援と経費節減とオーケストラ存続の一挙三得か。当然出演料も今までとは違う。多くの演奏家のギャラがじりじりと下がっているらしい。

「これからは全世界的に、アーティストのローカル・ソーシング。航空機を使った大移動のコンサート・ツアーは極力回避、若手発掘、そしてスーパー・スターを除き出演料の値下がりがトレンドとなるだろう」「ホールがフル・キャパシティでのコンサートに戻るのは5年以上または10年近くかかるという覚悟が必要」「アーティストたちは、これまでの事は《the PAST》であると認め、過去と割り切って現実を受け入れ、安い出演料でもそれがまともな仕事であり意義があるものなら喜んで受けるべきだ。昔ながらに『これこれしかじか』などと言っていれば、それこそ聴衆は演奏会に行くと言う習慣を忘れ、そういう演奏家もpoco a poco 忘れ去られていくのではないかと自分は感じている。」

ワンおばちゃんは話を聞き、ため息をつきながら暫く返す言葉を探したが、継ぐ言葉をみつける事が出来ず電話を切った。

WHOのテドロス事務総長じゃ無いけれど “Let me be blunt…. ”これが冷たい現実。しかし、諦めない事で失うものはない!どんな状況でも頑張ろうとワンおばちゃんは思う。こういう時こそ上質の音楽を!

人間の創造的生産性と言うものは、発揮しようと思えば、いかなる状況下においても、華が咲くがごとく、神が万人に授けた賜物であるとワンおばちゃんは固く信じるのである。

芸術に「非常時」はない。常に「今」が芸術だ。