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ミッドナイト・コールwith Timothy

昨日、ワンおばちゃんのミッドナイト・コール。今回はワンおばちゃんがかけるのではなく、かかって来たのである。RING RINGと電話が鳴ると受話器からヴィオラのTimothy Ridout 、弾みのある声。

本来ならばTimはいま日本にいて、子供たちのため“MY FIRST VIOLA” ワークショップとコンサートをしているはずであった。しかしコロナの影響はいまだ収まるどころか、ヨーロッパでは勢いを増している感がある。特に英国においては再び飲食店が閉鎖するなどいろいろあるようだ。そんな中ではあるが、コンサートをしてきたのだ。「たったいまウィグモア・ホールでリサイタルをしてきた」(※注:日本ツアーが中止となったため急遽ウィグモアホール出演が決まったのである)

「数ヶ月前のウィグモアホールでのコンサートは観客を入れないオンラインコンサートだったので本当に弾きづらかった。当日ステージでリハーサルをさせて貰って、休憩して、さあ本番と言う感じで、なんだか本当に調子が出なかったんだ。いや、正確に言えば「調子を掴めなかった」んだよね。知り合いに話してみると『なにを贅沢言ってるんだTim、君はかれこれもう10回近くウィグモアで弾いてるのに、調子が出ないだのなんだのと』」。

「いままで何回か弾いたことがあるホールだし、オンラインで同時放送されるから緊張するけどいつもの通り演奏すれば良いだけと思ったけど、でもホールの中で実際無人の中で弾くのは全くいつもと違ったんだよね。今まで経験したことのない不思議な体験で、最後まで違和感が拭えなかった。」

ワンおばちゃんは聞いてみた「だってあなたはスタジオでラジオ放送経験しているじゃない?」「いやそれが違うんだ、ホールと言う会場で無人。レコーディングならわかる。その場合、時間内ならば何回でも取り直しも出来るし、一曲、一曲と言う形で作り上げて行く。今の時代モンタージュと言うこともある。ラジオはアコースティックが放送用に作られた空間で、人がいてどうのこうのと言う「箱」なんだ。ところがホールというところにはもともと聴衆が居てその人達に聴いてもらうものなんだよ」

さて、再び聴衆と「ひととき」を分かち合った喜びを楽しそうに語るTim。ワンおばちゃんは尋ねた。「ホールはどうだった。何人入ってたの?皆マスクしてた?」

「ホールは25%まで入れられるようになっていて、125人前後がソーシャル・ディスタンスを取って座っていた。全員マスクをしてた。途中で一人がマスクを取ったのが見えたけど、誰も声を出さず拍手してくれた。何だか凄くお行儀が良くなった感はちょっと不思議だったけど、日本みたいだったね。日本ってみんなお行儀いいだろう?・・・でもどんなに静かでも、聴いてくれている人々の息遣いや気持ちが伝わってくるんだ。まるで初めて人前で演奏した時と同じような感じ。こう言うのを「喜び」って言うんだよねきっと。」

「よかったねTIM。でもコンサート・ホールでの演奏会は再開されてもサロン・コンサートはまだダメでしょ」とワンおばちゃん。「いや、それが最近やっと始まったんだ!100名入るメリルボーンのサロンで、30名で再開したんだ。演奏前の飲み物は1階に沢山の小さいテーブルと椅子が用意されていて、そこに座っていただく。ドリンクを持って立ったり移動したりしてはいけないんだ。しかもそのテーブルでも、一緒に来場した人意外とのお相席はダメ。そしてコンサート前のドリンク・タイムが終わったらそのまま飲み物を置いて、ピアノのある2階のサロンへ移動。演奏会後のお食事やお飲み物、カクテルパーティ等は中止。」

「主催者が『ご来場の皆様、これは今までのサロン・コンサートと違い、もはや社交の場ではありません。this is not a social event anymore, this is strictly an evening for the joy of music alone』 とコンサート前の挨拶で繰り返し言っていた。何だかちょっとぎこちない感じがしたがやっとサロンが再びと言ったところだね。」

「でもサロンもホールも、今までと違って本当に音楽を聴きたいと言う熱気で溢れていて、ある意味そう言う空気の中で弾けるのは、たとえ人数が少なくとも本当にありがたい。」

「しかし、一寸先は闇と言うかまた暫く閉鎖というかなんか、、、、、、。」

.以上はワンおばちゃんのミッドナイト・コールwithはロンドンでした。