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ツアー中に練習をすることの難しさ

ツアーというのは音楽家にとって大切なものですというか、ツアーのない音楽家は音楽家ではありません。旅芸人、という言葉を使うと心理的にちょっと反発したくなるかもしれませんが、世界各国を旅して回って、特定のコンサートホールなりなんなりに集まってくる人の前でパフォーマンスをするのでやっぱり旅芸人だと思うんですけど、旅をしてなんぼ、毎日違う部屋でおきてなんぼ、という世界でございます。

さすがに365日違うお部屋でお目覚め、というのはきつすぎるしできないと思うんですが、かなりの割合を旅にあてる、それが音楽家。

では練習はどこでどうやってするの?という質問が出てきます。なのでこういうページがあるわけだ。

「5 tips on finding time to practise while touring」
https://www.thestrad.com/playing-and-teaching/7-tips-on-finding-time-to-practise-while-touring/9852.article

↑すいませんログインしないと読めないページなんですけど。

要するに「ツアー中に練習時間を見つけるための5つの方法」というタイトルで、その方法を教えてくれているのはアルメニアのオケでヴァイオリンを弾いているおばちゃんで、彼女によれば、その5つとは以下の通りなのだそうです(ピアノとか、楽器を持ち運べない人についてはこれは当てはめられないのですが)。

(1) 事前に周到に計画する。自由時間をどう使うか考えておく(これはまあそうですよね)。
(2) ヴァイオリンと弓を磨いておくこと。そうすると楽器が美しく輝き、練習したくなる(まじかよそんなことないだろうよ!・・・と思うのは素人だからでしょうか)
(3) コンサートホールのステージで練習する機会を逃すな。(リハーサルの前後にステージ上が使えるっていうやつですね)
(4) 空港で。少なくともピチカートぐらいの練習はできるわ(すげーメンタル)。
(5) 飛行機の中で。楽譜を読んで頭の中で練習するのよ(えらすぎる)

4については私も目撃体験がありまして、ヴァレンチャイというトランペット奏者がいるのですが、彼が羽田空港で楽器を取り出してほとんど音を出さずに練習していたのにはぎょっとすると同時にすごいなと思いました。

それから私の知り合いには、同じプログラムで演奏し続ける限り、練習時間は1日1時間ぐらいとか、限りなく少なくてOKと言った人もいます。身体が覚えているんだね。すごいね。

しかし一生あなたは同じプログラムで演奏し続けられるわけではない。お客さんも飽きてくるし、新ネタないのー、ってことになりますし、自分も飽きてきますね。

来年私どもが招聘しようとしているギタリストのマルツィン・ディラは変わっていまして、ある一つの特定のプログラムをずっと演奏し続けるのだそうです。

そして、この曲飽きてきたなと思ったらその曲を外して、違う曲を1つ2つ入れるそうです。そして、またそれでしばらく演奏し、またもういいかなと思う曲が出てきましたら、その曲を外して違う曲を入れる。こうしているうちに気がつけば全く違うプログラムができているのだ、とこういうわけだ。

これは大変おもしろいなと思いました。

しかし同時に、コンサートにはお客様がいて、コンサートを主催する人がいる。そういった方々の意向というものもあるわけです。去年この曲は誰それが弾いたので、違う曲にしてくれないか、とか、そういうやつです。しかし、それは一切受けない、というのがディラのスタイル。自分の演奏に絶対の自信があるからできるのでしょうね。そして主催者やお客様のほうでも、彼はそういうタイプだ、という理解ができているのでしょう。これまたすごい話だ。

なんか今日は散漫な感じの文章になってしまいました。・・・まあそういう日もあるよね。許してちょんまげ。

それではまた来週。ごきげんよう。