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面白い逸話シリーズ。ホロヴィッツ来日編

花粉が厳しい季節になってきました。今まで毎年、耳鼻咽喉科に行ってたけど、激混みで長時間待たされるし、いやだなと思っていたんですよ。ところが、アレルギー科とか内科とかでもいいんだって聞きつけて、さっそく昨日アレルギー科へ行ってみたらガラガラで一瞬で終わったぜ。お薬も超速でもらえて、カイカイ目とジャージャー鼻も一発ソールドアウト!!アレルギー科最高や!!!アレルギー科を絶対の自信でおすすめしたいと思った昨日夕方であった。

さて、こんどは松尾楽器商会に長く勤められた調律師、倉田氏のインタビューがBachtrackに掲載されました(英語)。先日ご紹介をいたしましたベルリン・フィルの調律師へのインタビューと同じシリーズですね。

厳密に言えばサントリーホールの調律師、という書き方はちょっと違うのかもしれませんけれど、サントリーホールの楽器に関しての最終責任者とかそういう感じのお立場だったかと思うので、それは違う!というのも違うのでしょう。って例によって適当に書いておりますがご容赦ください。

さて、その倉田氏へのインタビューですが、日本語でされたものを英語になおしているのではないか、日本語で読みてえよ!!とかそういうクレームはさておき、気になるかたは全文がここにありますから、じゃんじゃんお読みくださいね。

https://bachtrack.com/feature-piano-tuners-keyboard-month-suntory-hall-february-2020

で、私が一番おもしろいなと思ったのが、逸話のコーナーです。逸話、アネクドートっての?それはやっぱ私も大好き、みんなも大好きだろっ!!えっ!!!違うのか!!

強要してごめんなさい。逸話のコーナー。前回?のチェルカスキーの話も面白かったけど、今回はもっと面白いぞ。ホロヴィッツの話やぞ。

During the rehearsal, Horowitz stopped playing suddenly and called Mohr. He sounded in a bad mood and said: “Franz, there is something wrong with this key! I can’t play repetition well!”
Mohr looked at the key he was pointing at for a moment, then said: “Maestro, in order to fix this, it will take me about half an hour. Would it be possible for you to have a short coffee break in your dressing room while I do it?”
After Horovitz left the stage, Mohr only watched the motion of the key and did not really fix anything. Horowitz came back from his break, checked the key and said, in a good mood: “It seems very good, Franz, thanks!”
Later Mohr said to my colleague: “Did you see what I fixed? I fixed his tired fingers and bad mood with a cup of coffee!”

https://bachtrack.com/feature-piano-tuners-keyboard-month-suntory-hall-february-2020

「ホロヴィッツが日本に来たとき、もちろん調律師のフランツ・モアも一緒だった。ホロヴィッツはリハーサル中に突然モアを呼び出して曰く、フランツ、この音がおかしい、連打がうまくできない、と言った。ちょっと楽器の様子を見たモアはホロヴィッツにこういった。『調整するのに30分ぐらい必要です。楽屋でコーヒーでも飲んで待っていて下さい。』

モア氏はちょこちょこっとピアノを触ったがほとんど調整らしい調整をしなかった。30分後にホロヴィッツが再びやってきてピアノを触る。うん。いいねありがとう、と言う。あとになってモア氏曰く『私が何を直したか気がついたかい?コーヒー一杯で彼の指の疲れと機嫌をなおしたのさ!』」

いやはや、これを逸話と言わずなんと言えばいいのでしょうか!!素晴らしすぎる話ですね。こういう話は大好物だぜ。

でもしろうとが形だけを真似て同じことをしたら絶対に怪我をするからダメよ。二人の長年の信頼関係があったからこその話であって、特に日本人は形から入るのが大好きだからつい同じことをしたくなる誘惑に負けちゃうかもしれないけれど、同じことをするといろんな意味で大炎上しかねないので要注意だ。

求められるのは技と経験と信頼ですよ。そして最後の信頼っていうのがね、難しんだよ。その徳を(多分)積みきったフランツ・モアみたいな人だけができる諸刃の剣だ。こうやって後からアハハっつう話にできるが極めて危険なバランスの上になりたつ綱渡りゲームなのだ!ババーン!!強調してしすぎることはありませんが、いい子のみんなは同じことをやっちゃダメだ!!・・・って説教臭くてごめん。