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ソーシャルディスタンス時代のコンサートはチケット代収入が激減します。

ソーシャルディスタンスの距離は国によって異なる

ソーシャルディスタンス。人と人との接触を避けるために距離や間隔を置こうというもので、国によって定めている間隔は異なります。WHOは1m以上を推奨、オーストラリアは1.5m、アメリカは6フィート(約1.8m)、英国は2m以上と規定されているそうです

日本でも2mっていう指針がありますか(間違っていたらすいません、ご指摘ください)。ただ、2mっていう数字が強く押し出されているわけではなくて、皆が「なんとなくちょっと離れようぜ」と思っている、ぐらいが現状でしょうか。

私の地元のスーパーでも、レジでは間隔を空けて並んでとテープが貼ってありますし、大きなビニールのカーテンがレジの前にぶら下がっていますが、特売品のところには人が群がっています。我先にもみ合って、じゃがいもを袋詰めしている。芋洗いである(いやほんとうに)。

さて本題。

Q:ソーシャルディスタンス時代のコンサートとは何なのか?
A:空席を作ることである。

えっ、そうなの?そうみたいです。欧米ではワクチンが出来るまで、もしくは集団免疫が獲得されるまでは、そんなことになりそうな雰囲気です。もしそうなったら実際どうなの、っていうのをボストン・シンフォニーホールの座席表を手に数字で出してみた人がアメリカにいます(2000~3000席程度のホールでクラシック音楽のコンサートを主催している北米の団体=オーケストラやオペラカンパニーなどを念頭に置いて書かれています)。

今後『6フィートのソーシャルディスタンスを守ればコンサート再開OK』となったとき「やったー!ついにコンサートに行ける!」っていうお客様サイドの歓喜の声もあるでしょうが、この場合主催側の現実問題としてチケット代収入が減じますしかも、ちょっとではなく「激減」する。具体的な数字を見たら震えるで。

日本ではどういうことになるかわからないですが。

なお、日本でコンサートの再開にあたって空席を作るようにって事になるかどうかは今の所わかりませんのでそのあたりはご留意ください。

というわけでとりあえず以下、原文は長かったんで抄訳なんですが、結論を先に書くと、仮にアメリカのソーシャルディスタンスの規定である6フィート(約1.8m)に則って空席を作ることになれば、ボストン・シンフォニーホールに入場可能な人の数は19%程度にまで減少するそうです。19%程度減少じゃないよ、19%程度にまで減少、ですからね。

●アメリカのボストン・シンフォニーホールは約2,625席あるが、6フィートのソーシャルディスタンスを守ると492名、総座席数の19%程度しか入場させることができない(原文では座席表を手書きで潰しつつ、何席確保できるかを示している。上の画像がその一部)。そしてこれはそもそも聴衆がこのような環境でホールに来るかどうかは考慮していない。

●奇跡的な額の寄付か政府の介入がなければむちゃくちゃ厳しい。2つの道が残されていて、いずれもかなりの犠牲を伴う。

(1)大ホールやオペラハウスを諦め、小規模な作品(小編成のオーケストラもしくは室内楽コンサート)を小ホールで演奏する。大規模な作品はソーシャルディスタンスが不要になるまでオンライン、無観客で放送する。それでもベートーヴェン第九、ヴェルディのレクイエム、ヘンデルのメサイアなど50人以上のプレイヤー、100名を越す歌手、ソリストが必要な曲はしばらく演奏できない。

大ホールから手を引くことはすべての団体に出来ることではない。例えばカナディアン・オペラ・カンパニーは自前の劇場を持っているからそもそも無理だ(貸し館、売店や駐車場からの収入も必要)。強力な労働組合を持つ団体も、ある程度の規模のコンサートをせざるを得ないだろう。

この1つめの道が選べるのはボストン交響楽団のように金銭的に潤沢な組織だ。彼らはオンライン中継および小編成の室内楽などでなんとか耐え忍ぶことが出来るだろう。

(2)それ以外の人達には第2の道が待ち受ける。破滅である。チケット代を引き上げ、アーティストおよび事務局のコストを限界までカットしなければならない。政府による救済措置、もしくは超巨額の寄付がなければ前途は悲惨だ。

客席の減少によって演奏家の出演料や給料はざっくりと切り取られてしまう。極限に少ないリハーサルで多数の公演を、しかも低賃金でこなさなければならなくなる。

広告宣伝費は限りなくゼロへ。スタッフも一時解雇を余儀なくされる。テレビ、ラジオ、印刷物を使った広告は不可能。定期会員数を増やすために多数の人を雇うことはそもそも必要がなくなる。広告費はほぼゼロになり、せいぜいソーシャルメディア広告、グーグル広告、Eメール、オンライン上の個人のネットワークなどでしか広報活動は行われない。

聴衆の数を絞らざるを得ないためチケット代金は一気に上昇する。すべてのチケットが少なくとも倍額になり、公演の数も増やさざるを得ない。

チケット代の上昇により富裕層、特権階級以外は交響楽やオペラを観ることが出来なくなる。公平性に欠けるし恵まれぬ一般人にとっては悲劇である。しかし中期的にみて主催者が収入を確保し破産を防ぐためにはこの方法を取るよりない。

●ワクチンが浸透し、ソーシャルディスタンスの不安がなくならなければ、大きなホールでの演奏会で利益を出すことはほぼ不可能だ。それがすぐ来ることを祈っている。

https://www.middleclassartist.com/post/the-post-covid-concert-hall-catastrophe-why-audience-attendance-is-the-least-of-our-problems

もしも日本でも同様に80%客席数減なんていうことになったら、利益どころか、コンサートをするたびに両方の穴から勢いよく鼻血ブッシャーの大出血ですよ。

もしそうなったらどうやって生き残っていくのか。日本の場合、政府による補償とかはこの感じだと望めそうにありませんので、これまでとは全く違う仕組みでお金を生み出す必要があります。違う仕組みって何だよって言われそうですが、それが簡単に思いつくなら苦労はないっすよね・・・。誰か助けてくれよ・・・。