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そろそろフランチェスコ・シューベルトについて話をしておこうか

フランチェスコ・シューベルトはご存知ですか。たいていの方は、フランツのほうなら知っているが、フランチェスコ・シューベルトは知らないでしょう。

私も知らない。

いったいどういうことか。「サリエーリ モーツァルトに消された宮廷楽長」というサリエリに関するおそらく日本語で読める唯一の伝記を読んでいたんですよね。たいへん面白くて読みやすい本なので、みなさまにもお勧めしたい。なによりも読みやすいんですよ。上の画像はフランチェスコ・シューベルトではなくて、サリエリです。

ところで、ここでは広く知られたサリエリと表記することをご容赦ください。「ざりがに」みたいな、いわゆる日本語的なべたーっとした発音ではなく「エ」にアクセントが来るんだと思うんで、そこに注意してみるとそれっぽくなれるかもしれません。わからない方は、声高らかに機嫌よく朝の太陽に向かって「ボンジョールノ!」と言ってみて下さい。はい、「ジョ」に力強いアクセントが来ましたか?

サリエリにはモーツァルトを毒殺した悪い無能な作曲家、というイメージが広く定着してしまっておりますが、実際は違うようだし、ウィーンで相当活躍していた人である。教育者としても有能で、ベートーヴェンとかシューベルトとかも含め相当数の音楽家たちを教えている。しかも無償で。

そして最後の方モーツァルトとはむしろそれなりに仲良くしてたっぽいんですけど、サリエリ存命のときからモーツァルト毒殺の疑いをかけられていて、本人も気にしていたそうです。ベートーヴェンは会話帳で揶揄していたようだし、ロッシーニなんか直接面と向かって「で、殺したの?」とか聞いたらしくて、赤裸々すぎる。聞かれた本人はさぞや無念であったろう。ああ。ああ。

しかし今日はフランチェスコ・シューベルト。

フランチェスコ・シューベルトとは誰なのか

察しのいいかたなら、ははん、と既に分かっていたと思いますが、これ、例のビア樽ふとっちょ、うそ、フランツ・シューベルトのことです。サリエリはメモ書きでこのフランツのことを「フランチェスコ・シューベルト」と書いているんですよ。面白い。多分メモだけじゃなくて本人に向かってもフランチェスコと言っていたに違いない。

当時は今よりもっと名前とか原語表記とかそういうのに緩やかで、「サリエリせんせー、作曲おせーてくだせー!」「おお鼻垂れ小僧、おぬし名前は」「吾輩の名はフランツ」「そうかフランチェスコじゃな?」そういう会話がなされたであろうことは容易に想像がつく(失礼な会話を想像して申し訳ありません)。

サリエリはイタリア人。ドイツ人のフランツはイタリア人ならフランチェスコなんだから、覚えやすい名前で覚える。それが普通だったのでしょう。ええやん。あからさまで非常に面白い。

フランチェスコってWikipedia読むと面白いですよ。アッシジの聖フランチェスコがどうも起源っぽくて、もともとは「フランス人の」とかそういう意味。だんだんと子供の名前するのがポピュラーになっていったらしいんですよね。女性だとフランチェスカ。

各国でそれぞれの言葉に応じて名前も緩やかに変化していって、ドイツ語ではフランツ、フランス語だとフランソワ、ハンガリー語フェレンツ、英語フランシス、ポルトガル語フランシスコ。

これぜんぶ同じ名前。

別の本で、フランツ・シューベルトのフランスで出版された楽譜にFrançois Schubertと書かれているのも見た。フランソワ・シューベルトである。さすがに今となってはフランス人もフランソワとは言わないと思いますけれど、ちゃんとフランツ・シューベルトと言っているかというと「フハン・シュベーフ」とかそういう感じの発音してる。むしろ全然わからん。

なおドイツに全く同じ名前の、ドレスデン生まれの音楽家フランツ・シューベルトがいて、その人のパパもフランツ・シューベルト。こちらの息子シューベルトはフランスでちょっと名前が知られていたようで、フランソワ・シューベルトという名前で記憶されているんだそうです。フランソワ・シューベルトでWikipediaに項目があったから知った。

以上、本日の内容は、覚えておくとZoom飲み会で知識をひけらかせるので便利です(うざがられます)。