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ベンジャミン・フリス、西へ

昨日の名古屋宗次ホール公演にご来場いただきました皆様、ありがとうございました。素晴らしすぎる演奏で、みんなぶっ倒れたと思うんだよね。

なんていうか、ほんとうに優しさがすっと心の中に入ってくるような、気負いがなくて、でもぴんと張りもあって、素晴らしいという言葉がなんどでも出てくるような音楽でした。

素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい。4回言ってみました。どうでしょう?

どうでしょうとかいきなり言われても困りますか。困らずに、さあご一緒に!素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい!!

なんだか呪文のようだ。だんだんきもちよくなってきましたね!!素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴ら(以下エンドレスで)・・・・

さて、昨日はなんと、アンコールも大盤振る舞いで、2曲もベートーヴェンのソナタからアンコールが演奏されました。1つ目は東京でも演奏した15番のソナタ(田園)の第2楽章、そして2つ目は11番のソナタの第3楽章。

まさかの11番の第3楽章。私はこの曲の第2楽章が死ぬほど好きなんですよね、と舞台袖に戻ってきたベンジャミン・フリスにいいましたところ、あの曲は本当にただただゴージャス、この楽章もゴージャス、とものすごい上機嫌でした。そして・・・・その次の言葉に私は驚愕するのです。

「この曲を前に弾いたのはいつだったか思い出せないけれど。」

えっ、ちょっと待った。何年も弾いてない曲を、全く練習なしに、いま舞台上で、めちゃくちゃうまく弾けましたけど、そういうことなの?

「え、そうだけど。14歳のときにこの曲を勉強したからね。ほら、子供の頃に勉強した曲って、忘れないよね。いま突然弾きたくなったから、弾いたんだよ。」

はっ?

「ディアベリは違うんだよ、この曲は29歳のときに初めて演奏して、録音したから。それからこないだの東京で演奏するまで一度も弾いてなかったんだよね。だからちょっと記憶の面でもう一度やりなおさなくちゃいけなかった」

はっ?

いや普通、何年も演奏してない曲を舞台上でいきなり弾けますか。弾けませんよね。驚愕した私はクラクラときて、いやここで倒れてはいけないとハタと思い出し、しっかと両方の足を踏ん張ったのである。

くたびれたおっちゃん風のフリスさまですが、やっぱ凄まじい才能をお持ちなのだ、ということを痛感いたしました。土管で頭をガンと殴られたような衝撃でしたね。やっぱ自分はピアノやめてよかったわ。こんなえげつない才能もった人こそが、ピアノをやるべきなのです。

ちなみに(ベートーヴェンのピアノ・ソナタ)32曲全部弾けるんですか?

「コンサートで弾いたのは12曲だけだね。もちろん32曲全部弾けるけど」

12曲とか即答してくるあたりも、壮絶な記憶力だ・・・・。

各方面から大絶賛の声をいただいているベンジャミン・フリス氏、今日は西へ移動。今日明日、コンサート活動はおやすみですが、昨日も書きましたとおり、金曜日に広島県三次市で土曜日には京都府福知山市で演奏をしますので、都合のつくピアノファンの方、絶対に行って下さい。

■今日は10時からリュビモフのピアノリサイタルの発売です。皆様、ご予約お待ちしておりますー。(メールでお申し込みの方も、10時以降に送信ボタンを押してくださいね。)