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来月の第4週は、《濃密》ゴドフスキー・ウィーク

昨日、アンドレイ・ググニンのゴドフスキー・コンサートに関しましてブログで書きましたところなかなか反応がありまして、チケットも売れ、ツイートは普段の3倍ぐらいリツイートされ(1万リツイートにはまったく届きませんけれども)、サイトへのアクセス数も倍ぐらいになりました。

そして、、、、屈指のピアノマニアであり、尊敬いたします先輩でもありますK氏から連絡がきました。私も主催をしますよ、これっつって。

http://www.jk-arts.net/concert.html

ああああ、私のアンテナはなんと感度が悪いのでしょうか。私はこの公演を見逃していました。しかしながらこうして、主催者の方自らお教えいただき、私は感謝の念にたえない。ググニンが「オールゴドフスキーに献呈作品」っていう意味不明なプログラムを演奏する金曜日に対して、その同じ週に、フランチェスコ・リベッタがゴドフスキーのエチュード53曲を全曲演奏するという鉄人プログラムだ。

私も前職の武蔵野文化事業団でいろいろな鉄人公演を企画してやってきましたけれど、ついに実現することのなかったプログラムの一つです。マラソン企画の中でももっともやばくて、もっとも危険なプログラムでしょう。濃いピアノマニアが集結することは間違いがなく、演奏中に恍惚の表情を浮かべるやばいやつらが続発することは間違いない。そうでなくても、「やべえ、やべえ」って今からみんな心のなかで思っていると思いますよ。

そもそもマラソン公演というのは、欧米の演奏家は先入観があるのか、かえってなかなか受けてくれません。無理だねという人も多いし、自分はいいけど、聴くほうが耐えられないと思うよ、というようなことを仰ることもあります。(マラソンコンサートっていうのは欧米でもあると思いますが、マラソンと言うよりも駅伝的なコンサートが多いのではないかと思います。演奏者が交代しながらやっていく、というパターン。これはこれでいいのでしょうけれど、聴衆と演奏家との一体感という意味ではやや劣るかな?)

この点において日本の聴衆は欧米の聴衆よりも数段進んでいると私は感じています。耐久プログラムなら大好物なのです。有名なところでは年末のベートーヴェン交響曲全曲プロジェクトとかありますよね。そういうことをやってるのって、圧倒的に日本だと思うんですよね。ちゃんと調べたわけじゃないけど。耐えて完走するその最後のカタストロフィーというのでしょうか、そういうのがたまんないわけだ。

ショスタコのカルテット全曲を一日で、とか、平均律を一日で、とか、プロコフィエフのピアノソナタ全曲、とか、ラフマニノフの協奏曲を一日でとか。もちろん演奏家にかかる負担もものすごいし、考え方も人それぞれなので、全曲演奏会を受けないからと言ってダメっていうわけではまったくありませんので、念のため。

全曲演奏会っていうのは、全曲演奏が好きっていう、限られた演奏家の中の、さらに体力と精神力に余裕のある人限定でできる企画です。下手したら命がけになりますもん。ベートーヴェンのピアノソナタ全曲連続演奏会をやったときはピアニストが本当に途中で倒れそうになりました。ワルトシュタインが終わった後に、あまりにも憔悴しきっているので、もういいよ、これまでにしましょう、やめましょう。とタオルをリングに投げたくなりましたもん(最終的には無事完走。アンコールにディアベリ変奏曲も弾いて、聴衆も演奏家にとっても忘れられない企画になりました。I will never forget this project.と涙を浮かべて言われました)。

いやはや、しかしゴドフスキーのエチュード53曲を一日で、っていうのはもう、ウェブサイトにもありますけれど、生涯に一度あるかないか的なプログラムに付き、これは絶対に参加しなければならないなと強く感じています。

http://www.jk-arts.net/concert.html

さあ、9月の第4週はゴドフスキーウィークです。月曜日にリベッタを戸塚で聞いたら、金曜日にググニンを錦糸町で聴く。21世紀ジャパン・ゴドフスキー・フェスがここに爆誕したのである!!!!!(勝手に作ってごめんなさい)

繰り返しますがこういうのは日本でしかないです(たぶん)。日本人で良かった、と思う瞬間の一つです。アンテナの感度が低い私にこの公演を教えてくださったK氏に感謝申し上げたい。

なお、このようなことを申し上げるのはどうかなとも思ったのですが、ショパンは好きだけれど、ゴドフスキーってなあに?あわかったチャイコフスキーのお友達ね?・・・っていうソフトなファンの方は参加なさらないほうがいいです。天保山しか登ったことのない人がK2とかアンナプルナとか、マッキンリー冬季単独に挑むみたいなことになります。