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ニューヨーク・タイムズ紙「オーケストラは黒人、ラテン系を優先的に採用すべし」

昨日のシェフィールド大聖堂の話とも近いのかなと思っているのですが、それは先日のニューヨーク・タイムズ紙。このブログでは採り上げていませんでしたが、「オーケストラの多様性を確保するため、ブラインドオーディションをやめるべき」と恐ろしく真面目な口調で記事を出していたんですよ。書いたのはアンソニー・トマシーニ氏。7月16日付け。

To Make Orchestras More Diverse, End Blind Auditions
オーケストラの多様化のため、ブラインドオーディションは廃止すべしき
https://www.nytimes.com/2020/07/16/arts/music/blind-auditions-orchestras-race.html

そうかもしれないし、ちがうかもしれない(しつこい)。

「ブラインドオーディション」っていうのについて軽く触れておきますと、年齢、性別、肌の色など見た目で有利不利が発生しないよう「オーディションを受ける人(演奏する人)と審査する人(聴く人)との間にカーテンなどで仕切りを作って実施する」オーディションのことです。当然ですが演奏者の名前、性別、年齢など個人情報は審査員に知らされず、わかるのは番号のみ。

耳に聴こえてくる音楽だけで判断する=見た目に惑わされなくて済むってんで、オーケストラだけでなく一部の国際コンクールでも用いられてきました。自分も国際オルガンコンクールの運営で「審査員の席の前に黒い布を張る」っていうのを見たことありますよ。

トマシーニ氏のご意見をざっくりまとめると「ブラインドオーディションの時代は終わった。ブラインドオーディションの結果として黒人やラテン系が入れないのはおかしい(例えばニューヨーク・フィルに黒人団員はクラリネットのアンソニー・マクギルただ一人しかいない)。音楽的にも技術的にも、いまの若者は極めて高度なレベルにあり、差なんてほぼ全くない。だから人種や性別のバランス良く採用しようぜ!」というものです。

いやいや、大差がなければ人種に関係なく満遍なく入団してるんじゃないの。アジア人は多いんですけど、それはアジア人に優秀な人が多いからじゃないんすか。

優秀な奏者になるためには多額のお金や教育も必要なので、貧しいけれど優秀な子どもたちを小さな頃からサポートしようぜ、ならともかく、ブラインドオーディションを槍玉に挙げるのは乱暴。かえって差別主義的に響きませんか。マラソンで「アフリカ勢は速すぎるから3分ハンデね」とか言われたら一斉にみんな反発するんでないの。誰もが入団したいと必死に練習してるのに「※見た目でのバランス調整あり〼」(居酒屋風だね)とか言われたら、受ける側からすれば「やってらんねー」ってなると思うんですけど。

書いているトマシーニ氏が無邪気に信じてそう主張しているのなら思慮があまりにも足らないし、自覚的に書いているとしたら悪趣味、このところのデモなんかに悪乗りしてるのではという感じなんですが、もしかすると「よく言った!」と肯定的に捉えられていたりするのでしょうか。

レブレヒトのブログでも「端的に不快」など、さすがにトマシーニ氏の主張に批判的なコメントが並んでいるけれど、批判するのは音楽関係者ばかりで一般的には擁護派も多かったりして、アメリカだし。・・・なんてふと思ってしまうのは私だけすか。